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#11 つばさキャット 其ノ壹

Amazon - 3Dマウスパッド 化物語 Amazon - 3Dマウスパッド  八九寺真宵 Amazon - 3Dマウスパッド  千石撫子

3Dマウスパッド 化物語 / 八九寺真宵 / 千石撫子

西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

Release : 2010 01-28 / 2010 05-22 / 2010 05-22

化物語 - 第11話 つばさキャット 其ノ壹

 学校の正門を抜けると、制服姿の千石撫子が申し訳なさそうに立っていた。今日の帽子は赤白帽だ。どうやら赤組らしい。顎紐は途中で切れ、だらりと両肩に垂れていた。
「暦お兄ちゃん、待ってたよ」
 何だろうこの威圧感は。もしかしてこれは勝負帽なのか。
「よ、よぉ…千石じゃないか。何してんだ、こんなところで」
「あ、うん、その、これ…」
 と言って、手渡されたのはスーパーのビニール袋だった。中に何か入っているようだが、よくわからない。
 取り出して見ると、それは昨夜、目に焼き付けたスクール水着だった。
「…千石。これは……
「大丈夫。ちゃんと忍野さんに言われたとおり洗ってないから」
 何が大丈夫なんだ!?
 洗ってないと何が大丈夫になるんだ!?
「でも、忍野さんって優しいよね。洗濯は僕がするからだなんて。将来、絶対いい主夫さんになると思うよ」
 まず心の洗濯をしないと、結婚なんて無理だろう。
……たぶん、それはないんじゃないかな」
 仮に結婚できたとしても、「僕の対価は旅をし続けることなんだよ」とかいって、婚姻届を提出したその日に蒸発しそうだよ。
「あ、あと、これも…」
 と言って、手渡されたのはまたしてもスーパーのビニール袋だった。中に何も入ってないんじゃないかと思わせるほど軽かった。
 中のものを取り出して見ると、それは手紙のようだった。
 ビニール袋を封筒代わりに使うのは千石くらいだろう。千石といいアマゾンといい何でこうも極端なんだろう。
 手紙を広げて見ると、そこには『I LOVE YOU』と書かれていた。
 マスゲームのようにびっしりと並んだホッチキスの針が文字をかたどっている。
 これは先月、うちに来たのと同じものだ……
「千石の家にも来たのか。この脅迫状」
 ビクリと千石の肩が揺れる。
 千石は帽子を裏返し、白組に寝返った。
 よっぽど怖かったんだろう。
「大丈夫。僕がなんとかするから」
 そう言って僕は千石の目の前でその手紙を破り捨てた。

 翌日、僕の左足に緊縛の痕がうっすらと浮かんでいた。

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#10 なでこスネイク 其ノ貳

Amazon - 傷物語 (講談社BOX)

傷物語 (講談社BOX)

西尾維新
出版社 : 講談社
単行本(ソフトカバー) : 357p

Release : 2008 05-08

化物語 - 第10話 なでこスネイク 其ノ貳

「阿良々木先輩。いくら呪いを解くためとはいえ、人気のない夜の神社跡で、女子中学生にスクール水着を着せるのは、いろいろと問題があるのではないか?」
「仕方ないだろ。忍野がスクール水着じゃないとお守りの効力が発揮できないって言うんだから。僕だってこんなことさせたくないさ」

 ――水着といえばスクール水着。阿良々木君、繰り返しになるけど、この言葉をよく覚えて、この言葉の意味もよく考えておいてね。

 忍野はそう言って、このお守りと儀式に必要な機材を用意してくれた。怪異に対抗する術をもたない僕は、専門家である忍野の指示に従うしかない。
 従うしかないんだ。
 ふふっ♪
「阿良々木先輩。アホ毛を犬の尻尾のように振るのはやめてくれないか」
 神原が軽蔑の眼差しを向ける。
「こっ…これは、辛いときや悲しいときに勝手に動くんだよ!」
「失敬。てっきり私は喜んでいるのかと」
 図星だった。
「神原、そこにビニールシートを敷いて、隅に照明をセットしてくれ。カメラはシート全体がフレームに入る位置に」
 僕は神原の指摘を無視し、平静を装うが、アホ毛は依然として左右に大きく振られていた。
 忍野は後学のためと言っていたが、儀式を撮影することに何か意味があるのだろうか。できれば、忍野に渡す前にコピーしておきたいのだけれど……まさかコピーした映像を見ると一週間後に死ぬなんてことはないよな。
「ぅ、うぁああぁぁぁぁ…!」
 突如、千石の悲鳴があがる。
「神原、何が――
 言いかけて僕は息を呑んだ。
 千石が苦悶の表情を浮かべ、口から涎を垂らしていた。
「千石っ!」
 千石は縛られていた。
 見えない蛇にではなく――赤い、真っ赤なロープに。
「見て……こよみ…お兄ちゃん、撫子のこと…」
 ごめん。千石。
「…かはっ……見て、ちゃんと見て……
 見てられない。
 僕にそっちの趣味はないんだ。
 千石の身体に食い込んだロープを外そうと手を伸ばした瞬間、右肩に衝撃が走る。
「阿良々木先輩、許せ!」
 神原が左腕一本で僕を突き飛ばし、押さえ込む。
「…神原っ」
「大人しくしろ! 興奮するな! あれは自縛の型のひとつ。まだMの入り口でしかない。このままじっとしていれば、もっとすごいものが見られるかもしれないのだぞ!」
「だがっ、神原! 僕には千石のあんな姿は耐えられない!」
 すると、神原は僕の喉元に右手をあて、艶かしいしぐさでそこから頭頂部へと右手を這わせた。
「神原、何を…」
 そして神原は、すっかり萎れてしまった僕のアホ毛を小指に絡め、左右に振って見せた。
 こいつ、わざとだ。
「失敬。てっきり私は喜んでいるのかと」
 わざとじゃないっ!?

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#09 なでこスネイク 其ノ壹

化物語 第六巻/つばさキャット 下 (完全生産限定版) [Blu-ray]

化物語 つばさキャット 下[Blu-ray] / [DVD]

アニプレックス
監督 : 新房昭之
出演 : 神谷浩史、堀江由衣、斎藤千和
時間 : 48分
第14話「つばさキャット其ノ肆」
第15話「つばさキャット其ノ伍」

Release : 2010 03-24

化物語 - 第09話 なでこスネイク 其ノ壹

「暦お兄ちゃんはもう大人だから、撫子の裸を見て、いやらしい気持ちになったりはしないんだよね?」
「えっ?」
 これは、分岐点…、フラグか。返答次第で千石を攻略できなくなる恐れがある。
 いやらしい気持ちにならないと答えれば、それは千石に魅力がないと言っているようなものだ。しかし、いやらしい気持ちになると答えれば、千石の手ブラがこれで見納めになるもしれない。
 ――僕は大人じゃなくて青少年だ。
 というのは少し屁理屈っぽいか。
「どうした、阿良々木先輩。答えに窮しているのであれば、ここで一度セーブしておいた方がよいのではないか?」
 そう言って神原は僕の目の前に左手を突き出した。
「何の真似だ?」
「私の左手に手を合わせて目を閉じてくれ」
 宣誓でもさせるつもりなのか。
 僕は神原に言われたとおり、手を合わせ、目を瞑る。
 すると、どこからともなく声が聞こえてきた。
 声の主はもちろん神原駿河だ。
「おお、阿良々木よ。死んでしまうとはなさけない」
 ドラクエかよ!
 しかも、いきなり死んでるじゃねーか!
「そなたが次のレベルになるには、あと90リットルの腐女子の血液が必要じゃ」
 どんな勇者だよ。
「そなたのこれまでの旅を冒険の書に記録してもよろしいかな?」
「…は、はい」
「ふむ…。では、記録はしないでおこう」
「記録しろよ!」
「おお、神よ! この者にひとときの休息をあたえたまえ!」
 お前に付き合った僕が間違ってたよ。

 愛想も小想も尽き果てたのか、いつのまにか千石が衣服を身につけていた。
 フル装備だ。
 なぜか帽子はキャスケットから目出し帽に変わっている。
「せっ、千石! 僕が悪かった。ちゃんと話を聞くから――
 千石は無言のまま部屋を出て行き――
 すぐにまた入ってきた。
 そして、緊張した面持ちでぽつりと呟く。
「部屋、変わったんだね」
「お前は僕の部屋に入る前にセーブしてたのか!」

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#08 するがモンキー 其ノ參

化物語 第五巻/つばさキャット 上 (完全生産限定版) [Blu-ray]

化物語 つばさキャット 上[Blu-ray] / [DVD]

アニプレックス
監督 : 新房昭之
出演 : 神谷浩史、堀江由衣、斎藤千和
時間 : 72分
第11話「つばさキャット 其ノ壹」第12話「つばさキャット 其ノ貳」
第13話「つばさキャット 其ノ參」
『つばさキャット』主題歌「sugar sweet nightmare」

Release : 2010 02-24

化物語 - 第08話 するがモンキー 其ノ參

「随分とはしゃいでいるわね」
 室内に入ってきた戦場ヶ原ひたぎは開口一番そう言った。
 この惨状を見ても平気の平左か。
「忍野さんに塗装のアルバイトでも頼まれたのかしら? 塗料に自分の血を使うなんて、不死身の身体におんぶにだっこもいいところね」
 床一面に飛び散った僕の血肉を避けるようにして、戦場ヶ原が近づいてくる。
「どうしてここに……、そうか…忍野が僕の携帯で…」
「違うわよ。阿良々木君が踏切で掠り傷を負ったとき、私は神原駿河の怪異が原因であることを知っていたわ。それに私の携帯電話は、阿良々木君からの着信を拒否しているから、繋がるはずがないもの」
「どうして…」
「踏切近くの電柱に阿良々木君がかつて所有していたマウンテンバイクが突き刺さっていたのよ。怪異の仕業なのは明らかだわ。となると、無力で無気力な阿良々木君が神原を連れてここへ来るのは当然の流れでしょう?」
 いや、僕はどうして恋人からの連絡を絶っているのかを聞きたいのだけれど。
「ま…マウンテンバイクは売ったんじゃないのか?」
「売ったわよ」
 そう言って戦場ヶ原は黄色い雨合羽を一瞥し、「十万円で」と売値を付け加えた。
 まさか神原に売ったのか?
 神原に自転車が必要とは思えない。
 でも、十万円ってなんだ?
 仕事料の不足分をマウンテンバイクで補填したんじゃないのか?
「それにしても付加価値ってすごいわね。阿良々木君。私がサドルに跨って、ハンドルをちょっと握り締めただけで、売値が九万九千八百円あがったのよ」
 …僕のマウンテンバイクは二百円まで減価償却されていたのか。
「そ、それはいくらなんでも元値が安すぎやしないか?」
「吸血鬼が乗り回した自転車なんて誰も買いたがらないわよ。――しかし、マウンテンバイクは呪われていて降りられない。逆に呪いを解くための代金を要求されてもおかしくないわ」
 僕の所有物はすべて家電リサイクル法の対象かよ。

「戦場ヶ原先輩…」
 戦場ヶ原が現れたことで正気を取り戻したのか、神原が口を開く。
「私は、戦場ヶ原先輩が…」
「黙りなさい。神原」
 戦場ヶ原はポケットからカキノキ科の果実ではない柿の種を取り出し、それを神原に向けて弾き飛ばした。
 まったく躊躇いのない動作で。
 放たれた柿の種は周囲の机や椅子を発泡スチロールのように吹き飛ばしながら、神原目掛けて一直線に――
 ぱんっ。
 柿の種は神原に命中し、レイニーデヴィルを神原の左腕ごと吹き飛ばした。
「嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼!!」
 レイニーデヴィルの、神原の絶叫が室内に響き渡る。
「今、私は阿良々木君と話をしているのよ」
「な、なんてことするんだよっ!」
 腕を切り落とさない方法を選択したのに。
 これじゃあ、僕の行為が――神原が救われない。
「い…いいんだ。阿良々木先輩」赤い雨合羽の神原が言う。
「よくはないだろう! 左腕が…、左腕がなくなったんだぞ!」
「阿良々木先輩だって五臓六腑が体外に飛び出しているではないか。それに比べれば、この程度の損傷…」
「僕のはすぐに治るからいいいんだ!」
 現に僕の身体はすでに修復を始めている。
「わ…私だって腕の一本や二本なら…こうして……
 ズビュッ。
 神原の左腕が生えた。
「この通り」
「お前もナメック星人かよ!」
「ちなみに傷ついたレイニーデヴィルも再生している」
「なんでだよ!」

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#07 するがモンキー 其ノ貳

化物語 第四巻 / なでこスネイク (完全生産限定版) [Blu-ray]

化物語 なでこスネイク[Blu-ray] / [DVD]

アニプレックス
監督 : 新房昭之
出演 : 神谷浩史、花澤香菜
時間 : 49分
第9話「なでこスネイク 其ノ壹」
第10話「なでこスネイク 其ノ貳」
『なでこスネイク』主題歌「恋愛サーキュレーション」

Release : 2010 01-27

化物語 - 第07話 するがモンキー 其ノ貳 / 視聴者投稿

「よお、ご無沙汰」
「どうしたの阿良々木君。全身傷だらけよ。小学5年生の女の子と喧嘩でもしたのかしら?」特に心配している素振りもなく平板な口調で戦場ヶ原が言う。
「いや、僕が一人で転んだだけだよ。バスケットボールが落ちてて、避けようとしたら、電柱に激突しちゃって…」
「バスケットボール? えらく親しげに呼ぶじゃない」
 お前もバスケットボールを人間と同列に扱うのか!
 なんで僕の周りはこんなにも寂しい奴ばかりなんだ。
「えっと、仙豆はいらないんだっけ?」
 戦場ヶ原が胸元からカキノキ科の果実ではない柿の種を取り出す。
「い、いらないいらない! しばらく休んでりゃ、すぐ動けるようになるさ」
「仙豆が嫌なら、お父さ…デンデを連れてくるけれど」
「お前はナメック星人の娘だったのか!? ゲフッ、ゴフッ…」
 声を張り上げたせいで、口の中に温かい液体が流れ込んでくる。
「どうしたの? 風邪? 口から赤い鼻水が垂れてるわよ」
「…大丈夫。本当に心配ないから」
「そう。じゃあ、そんな阿良々木君に大サービス」
 戦場ヶ原は右足を大きく振り上げ、僕の股間をぐしゃりと踏み潰した。

「なるほど。阿良々木先輩はMなのだな」
 丈の長いワイシャツにスパッツという如何わしい格好の神原が得心のいったように相槌を打つ。
「誰もそんな話はしていない。僕はただ、お前のそれが普段着なのかを聞いただけだ」
 怪異に襲われた翌日、僕は神原駿河の家にいた。
 神原の家は恐ろしいくらい広壮で格式高い。どちらかというと神原よりも戦場ヶ原の方にこそ、この家屋敷は似合っている。
「阿良々木先輩がどうしてもMでイキたいというのであれば、私がSでイクこともやぶさかではないが、左手が猿の手になってしまった私のS力は、人の領域を超越している。アホ毛が二度と立たなくなってしまうくらい阿良々木先輩の精力を根こそぎ奪ってしまうだろう」
 人の話を聞いちゃいない。
「じゃあ、もう服の話はいいよ。それで、猿の手を元通りにする方法だけど…って、何してんだよ!」
 突然、神原がスパッツを脱ぎ始めた。
「服は要らないから裸で話そうと言ったのは阿良々木先輩ではないか」
「お前の耳は、自分の興味のある言葉しか拾えない構造になっているのか!?」
「そんなことはない。ちょっとした冗談だ。さて、話を戻そう。私がスパッツの下にパンツを穿いているかどうか、という話だったな」既にワイシャツ一枚の神原が言う。
「脱いだ後にそんなこと言うなよ!」
「ふふ。阿良々木先輩はかわいいな。そんな阿良々木先輩に大サービスだ」
 神原は僕を押し倒し、股を開いて僕の顔を跨ぐようにした。
「!」
 僕は興味のある言葉も興味のない言葉も失った。
「そう、私は両性具有なのだ」
「!?」
「阿良々木先輩は男だから、今のでは少し言葉が露骨だったかな」
「!!!?」
「言い直そう。私はふたなりなのだ」

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#06 するがモンキー 其ノ壹

化物語 第三巻 / するがモンキー (完全生産限定版) [Blu-ray]

化物語 するがモンキー[Blu-ray] / [DVD]

アニプレックス
監督 : 新房昭之
出演 : 神谷浩史、沢城みゆき、斎藤千和
時間 : 72分
第6話「するがモンキー 其ノ壹」第7話「するがモンキー 其ノ貳」
第8話「するがモンキー 其ノ參」
『するがモンキー』主題歌「ambivalent world」

Release : 2009 11-25

化物語 - 第06話 するがモンキー 其ノ壹

 5月下旬のある日。教室。ショートホームルームの終わり。下校時間。僕は軍場に赴く覚悟を決めて、戦場ヶ原と一緒に下校しようとしたのだが、教室には戦場ヶ原の姿は見当たらなかった。
 どの道、このあと戦場ヶ原の家で勉強会を開くことになっているから、無理に一緒に帰る必要はないのだけれど、彼氏としては「じゃあ後で」とか「バイバイ」とかそういう台詞を交わしたいと思うのが普通だろう。
 そう、僕と戦場ヶ原は、男女交際をしているのだ。
 してるんだよな?
 などと思い悩んでいると、周囲の妙な視線を感じた。高校3年生という身分でありながら、恋と勉強を両立している優等生、阿良々木暦に対する羨望の眼差しかと思ったが、どちらかというと、それは哀れみに近い眼差しだった。
 原因と思われる戦場ヶ原の机の上には一枚の紙が置かれていた。
 近づいて見ると、それは”置かれていた”なんて生易しいものではなかった。
 紙はB5ノートの切れ端で、僕宛の書置きらしく、四隅を画鋲でとめられ、磔刑に処せられていた。
 戦場ヶ原。机に穴をあけても許されるのは小学生までだと思うぞ。

*****

用事があるので先に帰ります。
あの犬…、阿良々木君は今晩のおかず何がいいかしら?
近くのお店で『いぬのしあわせ プッチーヌ 超小型犬専用』というのを見つけたのだけれど、どうかしら?
それとも、『ラン・ミールミックス小粒の歯みがき粒入りシリーズ』の方がいいかしら?
私は、どちらでもいいのだけれど、できれば、阿良々木君には、私より幸せになってほしくないと、そう考えているわ。

*****

 画鋲よりも強力な、言葉の暴力という名の杭が、僕の四肢に突き刺さった。
 これなら訂正されない方がマシだ!
 僕は自ら犬であることを積極的に選ぶぞ。
 てゆーか、メール使えよ!
 お前とは絶対交換日記なんてしないからな、戦場ヶ原!

 自転車のペダルをこぎながら、学校の正門に向かう途中で考える。一度、うちに荷物を取りに帰るとして、タイミング的にはどうなんだろう。戦場ヶ原の家の前で、戦場ヶ原の帰りを待つというのも、主人を待つ犬のような気分になりそうで嫌だ。道中で、八九寺が3体くらい現れてくれれば、時間も潰せるかもしれないけれど…。
「危ない! 阿良々木先輩!」
 後方から叫び声。
 ハンドルはそのままで振り返る――
 右の頬に衝撃。
 僕の身体は数メートル吹き飛び、支えを失った自転車は勢いよく地面に倒れた。
 なんだ? 今のは? 茶色の…、丸太?
 起き上がろうとするが、頭が朦朧としてうまく起き上がれない。
 誰かが近づいてくる足音が聞こえる。
 軽快なリズム。
 そして、その音は僕の鼻先でピタリと止まった。
 見上げると、右手にバスケットボールを抱えたスポーツ少女が立っていた。
 さっきのは、バスケットボールが当たったのか。
「お初にお目にかかる。私の名は、神原駿河という。貴殿の名は何というのだ?」
 いや、この状況で最初にかける言葉が自己紹介っておかしいだろ。
 ”大丈夫ですか?”とか”ごめんなさい”とかそういう心遣いが先じゃないのか?
「大丈夫。問題ないよ。僕の名前は阿良々木だ」
 ってホラ、そんなこと言われてもないのに、僕、勢いで返事しちゃったよ。
 律儀に自己紹介までしちゃってるし。
 てか、お前、さっき僕の名前呼ばなかったか?
「それで、阿良々木先輩はこんなところで何をしているのだ?」
「それが自転車で下校中の先輩に対する質問か!」
「なんと! それは奇遇だな。実は私も下校するところだったのだ」
「まさか、”バスケットボールは友達だ”とかいうんじゃないだろうな」
「さすがだな。阿良々木先輩。見事な洞察力だ。いかにも。私はバスケットボールと一緒に下校していたところだ」
 男友達のいない僕以上に寂しい奴だな、おい。
「どうだろう? これから3人で一緒に下校するというのは」
 お断りだ。

「不愉快なことを言われた気がするわ」
 僕はまだ何も言ってないぞ。
「阿良々木君。もしかして、私と交換日記したくないとか思ってないでしょうね」
 戦場ヶ原の瞳に炎が灯る。
 こいつ、僕の体内に盗聴器でもしかけてるのか。
「いえっ、したいです! ぜひさせてくださいっ!」
「あら、そう。でも、私、交換日記なんてしたくないのよね。面倒臭いし」
「お前がしたくないのかよ!」
「それはそうと、アララギ君。これ、忍野さんに渡しておいてもらえるかしら」
 戦場ヶ原から茶封筒を受け取る。
「忍野への仕事料か。思ったより早く準備したんだな。バイトでもしたのか?」
「いらなくなったマウンテンバイクを売ったのよ」
 ……。
「へぇ、お前もマウンテンバイク持ってたんだ?」
「ええ、5月14日に忍野さんちの前で拾ったの」
「それ、僕のマウンテンバイクじゃないか! 」
「違うわ。かつて阿良々木君が所有していたマウンテンバイクよ」
「だから、僕のじゃねえか!」
「阿良々木君。あなたは私の恋人で、私はあなたの友達なのよ。恋人のものをどうしようが私の勝手じゃない」
「僕らはそんな不安定な関係だったのかっ! だいたい、そのときはまだ付き合ってもいなかっただろう!」
「だから、さっき売ってきたのよ。あ、それから、ラン・ミールミックスは売り切れだったわ。ごめんなさい」
「そこは謝らなくていい!」

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